相続税は原則として現金一括払いが必要です。しかし財産の多くが不動産や株式の場合、現金が不足して一括納付が困難なケースがあります。そのような場合に活用できるのが「延納」と「物納」です。本記事で要件・手続き・注意点を解説します。
相続税は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に現金で一括納付するのが原則です。クレジットカードやローンは使えません。しかし財産の大半が不動産・株式などの「換金しにくい財産」の場合、現金が不足するケースがあります。
延納とは、相続税を年払いの分割払いで納税する制度です。最長20年(不動産の割合が多い場合)にわたって分割して納付できます。ただし分割払いの利子に相当する「利子税」がかかります。
💡 延納の最長期間
| 財産の状況 | 最長延納期間 |
|---|---|
| 不動産等の割合が75%以上 | 20年 |
| 不動産等の割合が50%以上75%未満 | 15年 |
| 不動産等の割合が50%未満 | 5年 |
申告期限(10ヶ月)までに「延納申請書」と「担保提供書類」を税務署に提出します。税務署が審査し、許可または却下の通知があります。
延納期間中は「利子税」が年率で課されます。2024年時点の主な利子税率(特例割合)は以下の通りです。
| 延納の区分 | 利子税率(本則) |
|---|---|
| 不動産等に係る延納相続税(不動産75%以上) | 年3.6% |
| 不動産等に係る延納相続税(不動産50〜75%) | 年3.6% |
| 動産等に係る延納相続税 | 年5.4% |
※実際の利子税率は「特例割合」(市場金利に連動)で計算されるため、上記より低くなる場合があります。
物納とは、現金ではなく不動産・有価証券などの現物で相続税を納める制度です。延納によっても金銭での納付が困難な場合に利用できます(延納→物納の順序が原則)。
⚠️ 物納は「延納でも払えない場合」の最終手段
物納は「延納しても金銭で納付することが困難」という要件があります。最初から物納を選ぶことはできません。
| 延納 | 物納 | |
|---|---|---|
| 納付方法 | 現金を分割払い | 不動産などの現物 |
| 利子税 | あり(年3〜5%程度) | なし |
| 財産の評価 | — | 相続税評価額で国が収納(時価より低い場合が多い) |
| 向いているケース | 将来的に現金化できる見込みがある | 不要な不動産を手放したい |
物納は「相続税評価額」で財産を国に渡すため、時価(市場価格)より低い評価額で納税することになります。不動産の時価が評価額より高い場合は売却して現金納付・延納の方が経済的に有利です。